いろんなことが見えてくる私。彼とのサヨナラもできそうな気がしてきた。このままでは、前に進めないままだと、いろんな人に教えられている気がした。
だけど、たださよならといったところで、おそらく彼は納得してくれないだろうと思った。きっと、彼は納得しない。おそらく、憤慨するに違いない。だから、私は考えた。本来、私はウソをつくことは嫌いで、できる限り本音でありたいとは思うが、ただ単に「このままではお互いにとってよくない」という論理では彼を納得させられないと思った。もし、それが通用するくらいなら、このメールすらこうして続くことはなかっただろうし、ここまで引っ張ることもなかっただろうと思う。
最後に・・・ウソをつかなければと思った。本意ではないにしろ、彼をおさめるためにはそれも仕方がない気がした。なるべくウソをつくことなく、彼を諦めさせる方法・・・。それは私という女は、彼には全くふさわしくない女だとアピールするしかないと思った。彼は自尊心の高い男だ。彼を責めてもそれは逆効果。私がどうしようもない女だということを知らせる他ないと思った。
そこで私は考えた。そう、ロマンスグレ-のオジサマのことだ。このオジサマの話を入れながら、積極的にウソをつくことなく、彼を説得できないだろうかと思った。最後にウソをついて終りたくはない。だから、ほんの少し誇張する形で後は察してもらうという方法を取れないだろうかと思ったのだ。もし、ウソをつくことに何の抵抗がない性格であるなら、私は彼を納得させられるようなウソを考え、上手くつけたかもしれない。それの方が、何倍も彼を傷つけずに済んだかもしれない。でも、それはどうしても出来なかった。私の中の私ができなかった。だから、私は、私に何かを期待しているオジサマと、実際はそうなり得ない現実とを融合させて伝えるという方法しか用いられなかった。それが、私の中で最もレベルの高いウソだったのだ。そんなことを考えながら、私は慎重に筆を滑らせた。
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〇〇 △△さま
こんばんは。
××試験お疲れ様でした。
突然ですが、このメールをもってあなたに
メールを書くことをやめようと思っております。
きっと、これが最善の道でしょう。
私にとっても、あなたにとっても。
思い悩んだ末の結論です。すみません。
私はね、△△さん、本当は名乗って、あなたの胸に飛び込んで
いきたかったですよ。その胸に飛び込むことが許されるのならね。
でも、それは許されないことでした。
どうしても、許されないことなのです。
私はあなたからのメールをとても嬉しく思っていました。
私は多分、あなたのことが好きだったから。
あなたに恋していたと思いますから。
しかしながら、努めて冷静にあなたと向き合うことしかできませんでした。
自分の気持ちを抑えて、あなたの向き合うことは意外に辛いことでした。
自分が蒔いた種であるのに、それは殊のほか辛かったです。
あなた自身をも辛くさせて、自分自身も辛くなって・・・、
それでもあなたのことを思いたくて、なかなかやめられませんでした。
でも、もうやめなくてはいけない、あなたをこれ以上、苦しめてはいけないと
何度も何度も思いました。これ以上、あなたをかき混ぜてはいけないと。
あなたのことが好きでした。多分、とても好きだったと思います。
だから、さようならしないといけません。これ以上、あなたを苦しめられません。
これ以上、あなたを好きになったら、私も戻れなくなってしまいますから。
もうこちらの世界に戻れなくなってしまいますから。
あなたのいない世界で、生きていけなくなってしまいそうですから。
だから、サヨナラです。
私はとても勝手ですね。責められても仕方ないです。
でも、これが最善の道なのですよ、△△さん。あなたにとってもです。
今週末、〇〇市で学部の頃にお世話になったDrと会います。
彼は推定60歳くらいでしょうか。久しく会ってはおりませんが、
今回講演会でこちらに来られるそうで、私に会いにわざわざ足を延ばし、
一泊して帰るそうです。この意味、ご理解いただけますか?
そのDrとの待ち合わせは、彼のホテルです。
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ここまでに、ウソはありません。でも、この話をもう少し誇張させて彼へ伝えることになります。さて、彼への最後のメールはどうなってしまうのでしょうか?・・・(つづく)。
この続きは、明日以降にアップします。