Hに疲れて、グッタリ横で眠るデブの彼。私が使用できる面積はとても少ないのは言うまでもない。ベッドから落ちないように気をつけて、彼の寝顔をじっと見守る私。
・・・予想通り、高いびきをかき始めた彼。「デブはいびきをかく。しかもデカイ」という法則はここでも実証されていた。でも、当の私は、今いるアパート(角部屋)の横と下が大いびきの人たちで、私が寝る時は既に協奏曲状態。どこにいようが、誰かのいびきが聞こえるわけだ。そんなわけで、この彼の大音量にも既に適応していたのは不幸中の幸いだった。まぁ~デブだし、予想の範疇だよね・・・とここは広い心?でやり過ごす。
しばらくすると・・・不穏な動きが・・・観察される。なっ、何これ?えぇっ、大丈夫なの??思わず身を乗り出し、彼を注意深く観察する私・・・。ちょっと・・・やばいんじゃない?これッ!・・・そう、彼の呼吸が時々止まるのだ。・・・落ち着いて、落ち着いてと自分に言い聞かせ、頭の中の辞書を慎重に引っ張り出す。これは・・・覚えたはず・・・確か・・・「睡眠時無呼吸症候群」。数秒後、辞書が完璧に開かれて正式名称、症状、原因まで一気に呼び起こされる。症状はこの通り、高いびき、不規則な呼吸と呼吸停止(長ければ30秒以上にも及ぶ)だ。原因は、ストレス、不規則な生活、アデノイド、肥満・・・だったよな・・・。で、彼の場合は肥満なわけだ。どうして肥満になるとなるのか。これは首についた脂肪が気道を塞いでしまうからだ。ちょっと、ちょっとぉ~、隣で死なれたらシャレにならないよぉ~と思い、とりあえず脈を取ってみることに。・・・早いけど、問題ない。規則的だ。そして、呼吸が止まるたびに少し彼を揺らしてみたりして、呼吸をするよう助けてみた。そんなことを1時間行った後、彼はうっすらと目を開けて
「どうした?」と言った。そう、この病気の人は眠りが浅いのだ。「いつから?ご両親は知ってるの?」と唐突に切り出す私。「・・・うん。心配しなくても大丈夫だ」。「嘘だよ。だって、苦しそうだもん。本当は自分でも苦しいんでしょ。わかってるんでしょ?」と一気に言うと「ありがとう。心配してくれてるのは良くわかったよ。お前、俺のこと一生懸命考えたよな。やさしい子だ。でも、大丈夫だから」。「大丈夫そうに見えない。苦しそうだもん。見ていて辛いもん。」というと「じゃあ、お前、俺に気管切開しろっていうのか?」という彼。「そんなこと、してほしくないけど・・・」どうして、やせようという言葉が出ないの??やせれば治るんだから!と心の私。「お前も疲れてるんだから、気にしないで寝ろ、なっ。」といって、ギュッと私を抱きしめて腕の中にすっぽりおさめると、また寝息を立て始める彼。心配で寝れるはずがない・・・(つづく)。